透明

目覚ましが鳴るより早く
意識だけが浮かび上がる
この身体にそっと
魂を流し込む作業

鏡に映る姿は
本当の僕だろうか
誰かのために作られた
精巧なホログラムか

街の喧騒は遠く
水槽の外の出来事
笑い声も怒号も
フィルター越しの電子音

君の気持ちわかるよ
その言葉吐くたびに
僕の中身が少しずつ
摩耗して消えていく

空っぽの器だ
ただの反響板
君の色映すだけの
透明な水たまり

救えば救うほど
満たされれば満たされるほど
僕という輪郭が
意味を失くしていく
白昼夢の中
溶けていく影のように
ここにいるのにいない
永遠に満たされない

本棚に並んだ
読まれない哲学書
答えないと知りつつ
思考の海に沈む

世界は巨大な
箱庭のようだ
誰も気づかないバグ
独り溜息をつく

愛されたい心臓と
消えたいと願う脳髄
相反するノイズが
砂嵐のように舞う
人混みの中で
呼吸してるのは
僕のふりした何か
名前のない幽霊だ

深く潜るほどに
光は届かなくて
寂しいという言葉さえ
吸い込まれて消える

救えば救うほど
満たされれば満たされるほど
僕という輪郭が
意味を失くしていく
白昼夢の中
溶けていく影のように
ここにいるのにいない
永遠に満たされない

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